生前から考えるお墓選び

最期の迎え方
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「終活」の一環としてお墓を準備する人が増えています

お墓のことを考えるのは、まだ早いとお感じになるでしょうか。しかし最近では、生前にお墓の準備を進める方が増えています。株式会社はせがわが2024年に実施した調査によると、お墓を購入または移転した人の約3人に1人が「終活の一環」として準備を進めていることが分かりました。

この背景には、家族に負担をかけたくないという思いがあります。お墓の購入には平均で100万円以上の費用がかかるため、生前に準備することで遺族の経済的・精神的な負担を軽減できるのです。

また、自分が望む供養の形を選べることも大きな理由です。従来の一般的なお墓だけでなく、樹木葬や納骨堂など、お墓の形態が多様化しています。鎌倉新書の2025年最新調査(2024年購入者対象)では、樹木葬を選ぶ人が48.5%と最も多く、次いで一般墓が17.0%、納骨堂が16.1%となりました。

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お墓の種類と費用相場を知っておきましょう

お墓を選ぶ際に最初に知っておきたいのは、どのような種類があり、どのくらいの費用がかかるのかということです。

一般墓:家族代々で受け継ぐ形

一般墓は、墓石を建てて家族代々で受け継いでいく従来からのお墓です。鎌倉新書の2025年調査によると、平均購入価格は155.7万円となっています。内訳は永代使用料と墓石費で、墓石のデザインや石材の種類によって価格が変わります。

一度購入すれば、子どもや孫の世代まで使い続けることができます。ただし、毎年の管理費(年間約1万円)が継続的に必要で、後継者がいなくなると墓地を返還しなければなりません。

樹木葬:自然に還る供養の形

樹木葬は、墓石の代わりに樹木や草花を植えて供養する方法です。2025年調査によると、平均購入価格は67.8万円。費用の相場は20万円から80万円程度で、墓石が不要なため、一般墓に比べて費用を抑えられるのが特徴です。

多くの樹木葬では永代供養が含まれており、後継者がいなくても安心です。ただし、納骨できる人数に制限があることが多く、家族全員で入ることができない場合もあります。

納骨堂:屋内で供養する形

納骨堂は、建物の中に遺骨を安置する施設です。2025年調査によると、平均購入価格は79.3万円。ロッカー式なら20万円から80万円、位牌式なら10万円から30万円と、タイプによって費用が異なります。

天候に左右されず、いつでもお参りできるのが利点です。都市部では土地が限られているため、納骨堂を選ぶ方も増えています。

永代供養:後継者の心配がない形

永代供養は、寺院や霊園が遺族に代わって供養を続けてくれる形です。合祀墓(他の方と一緒に納骨)なら5万円から30万円、個別墓なら50万円から150万円と、費用に幅があります。

2024年の調査では、64.1%の方が後継者なしのお墓を購入しており、少子高齢化の影響がうかがえます。

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生前にお墓を購入するメリットとデメリット

生前にお墓を購入することを「生前墓(せいぜんぼ)」または「寿陵(じゅりょう)」と呼びます。中国では古くから長寿を招く縁起の良い行いとされてきました。

生前墓の3つのメリット

1. 相続税の節税になる

お墓は祭祀財産(さいしざいさん)と呼ばれ、相続税の課税対象外です。例えば、相続財産が5,000万円ある場合、生前に150万円のお墓を購入すれば、相続財産は4,850万円となり、相続税を約15万円節約できます。

※計算例:相続人が子2人の場合
・基礎控除額:4,200万円(3,000万円+600万円×2人)
・お墓購入前:課税遺産額800万円(5,000万円−4,200万円)→相続税約80万円
・お墓購入後:課税遺産額650万円(4,850万円−4,200万円)→相続税約65万円

2. 家族の負担を軽減できる

葬儀の際、遺族はさまざまな手続きに追われます。お墓が決まっていれば、納骨先を探す手間が省け、精神的な負担も減らせるでしょう。

3. 自分の希望を反映できる

墓石のデザインや場所など、自分が納得できるお墓を選べます。家族に任せると希望と異なるお墓になってしまう心配もありません。

知っておきたいデメリットと注意点

1. 公営墓地では購入できないケースが多い

多くの公営墓地は、遺骨がないと申し込めない規定になっています。生前墓を検討する場合は、民営霊園や寺院墓地を選ぶ必要があるでしょう。

2. 管理費が継続的にかかる

お墓を購入後、年間の管理費(多くは年間1万円前後)が発生します。長期間になれば、その総額も考慮しておく必要があります。

3. 家族の意向を確認しておく

子どもがお墓を継がない意向を持っている場合、管理費が負担になる可能性があります。購入前に家族とよく相談することが大切です。

4. ローンには注意が必要

ローンで購入し、返済中に亡くなった場合、残債は相続財産として課税対象になってしまいます。可能であれば現金での購入をお勧めします。

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墓地選びで押さえておきたい5つのポイント

お墓選びは長期的な視点が必要です。以下のポイントを確認しながら、慎重に選びましょう。

1. 立地とアクセス

高齢になると、遠方への移動が困難になります。自宅から通いやすい場所を選ぶことをお勧めします。公共交通機関でのアクセス、駐車場の有無、バリアフリー対応を確認しておくと安心でしょう。

2. 管理体制

見学の際は、共用部分の清掃状況や水場の管理状況をチェックしてください。管理が行き届いていない墓地は、将来的に荒れてしまう可能性があります。

3. 宗教・宗派の制限

お寺の墓地では、特定の宗派に限定される場合があります。檀家(だんか)になる必要があるかどうかも、契約前に必ず確認しましょう。

4. 永代使用権の内容

お墓の土地は購入するのではなく、「永代使用権」という使用する権利を得ます。一度支払った永代使用料は原則として返還されません。契約内容を十分に確認してください。

5. 後継者の有無

後継者がいない場合、墓地は無縁墓となり、最終的には管理者に返還されます。後継者が不確定な場合は、永代供養墓を選択するという方法もあります。

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墓じまいという選択肢も視野に入れておく

すでにお墓をお持ちの方の中には、「墓じまい」を検討される方も増えています。厚生労働省の発表によると、2021年度の墓じまい(改葬)の件数は118,975件。10年前の2011年度が76,662件でしたから、約55%も増加しています。

墓じまいの費用は、平均で50万円から200万円程度。墓石の撤去費用、閉眼供養のお布施、お寺の離檀料、新しい納骨先の費用などが含まれます。

墓じまいを行う際は、市町村長に「改葬許可申請書」を提出する必要があります。手続きには時間がかかることもあるため、早めの準備が大切です。

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お墓のトラブルを避けるために

国民生活センターには、墓地に関する相談が年間約700件寄せられています。トラブルを避けるため、以下の点に注意してください。

契約内容を書面で確認

永代使用料に何が含まれるのか、管理費の金額と範囲、離檀料の有無などを書面で確認しましょう。口約束では、後々トラブルの原因になります。

複数の墓地を見学する

1ヶ所だけで決めず、複数の墓地を見学して比較検討することをお勧めします。実際に足を運ぶことで、雰囲気や管理状況が分かります。

困った時は相談窓口へ

トラブルが発生した場合は、国民生活センター(消費者ホットライン:188)に相談できます。一人で抱え込まず、専門家の助言を求めることも大切です。

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今から始めるお墓選びの第一歩

お墓は、ご自身だけでなく家族にも関わる大切な問題です。元気なうちに、じっくりと考えを整理しておくことが、後悔のない選択につながります。

まずは、どのような供養を望むのか、ご自身の気持ちを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。一般墓を希望するのか、それとも樹木葬のような自然に還る形を望むのか。後継者の有無も含めて、現実的な選択肢を考えてみましょう。

そして、家族と話し合う機会を持つことも大切にしたい点です。「縁起でもない」と思われるかもしれませんが、元気なうちに話し合うからこそ、落ち着いて意見を交換できるのです。

【今からできる具体的なステップ】

ステップ1:情報収集
近隣の霊園や寺院のパンフレットを取り寄せ、費用や条件を比較してみましょう。インターネットでの検索も有効です。

ステップ2:見学予約
気になる墓地が見つかったら、実際に見学の予約を入れます。可能であれば、家族と一緒に訪れてみてください。

ステップ3:専門家への相談
分からないことがあれば、墓地の管理者や終活アドバイザーに相談できます。多くの霊園では、無料の相談窓口を設けています。

ステップ4:家族会議
見学後、家族で感想を共有し、それぞれの希望や懸念を話し合いましょう。意見が分かれる場合は、何度でも話し合うことが大切です。

ステップ5:契約前の最終確認
契約書の内容を細かく確認します。不明な点があれば、納得できるまで質問してください。

お墓選びに「遅すぎる」ということはありません。今日がいちばん若い日です。長期的な視点を持ちながら、ご自身とご家族にとって最適な選択を、ゆっくりと見つけていってください。

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