相続は誰にでも訪れる?今から知っておくべき5つの理由

相続の対策
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「うちには関係ない」と思っていませんか

「相続なんて、資産家だけの話でしょう」

そう思われている方も多いのではないでしょうか。しかし、実は相続は誰もが経験する可能性のある、身近な問題です。特に、40代後半から60代のみなさんにとって、親の相続はそう遠くない将来に訪れるかもしれません。

国税庁の「令和5年分 相続税の申告事績の概要」によると、2023年の死亡者数は157万6,016人。そのうち相続税の申告が必要だった方は15万5,740件で、約10人に1人が相続税の対象となっています。

さらに、家庭裁判所で扱われた遺産分割の調停・審判件数は、2024年に15,379件。20年前と比べて約1.7倍に増加しているのです。

この記事では、なぜ相続について今から考えておくべきなのか、その理由を詳しく見ていきましょう。

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「大相続時代」の到来が迫っている

相続について考えるべき最初の理由は、日本がまさに「大相続時代」を迎えようとしているからです。

団塊世代の高齢化で相続件数が急増

2025年、団塊世代と呼ばれる約800万人の方々が、全員75歳以上になります。厚生労働省の推計では、年間死亡者数はピーク時に168万人に達する見込み。相続件数も必然的に増加していくでしょう。

実際に、40代・50代の方の60%以上が、すでに相続について検討を始めているというデータもあります。株式会社鎌倉新書の調査によると、50代では約70%、60代では90%の方が親の相続を経験しているとのこと。

つまり、相続は「いつか」ではなく、「近い将来」に訪れる可能性が高い出来事なのです。

相続税の対象者も増えている

相続税の課税割合も、着実に上昇しています。令和5年(2023年)の課税割合は9.9%で、前年より0.3ポイント増加しました。

地域によって差はあるものの、東京都では18.7%、愛知県では15.1%、神奈川県では14.3%と、都市部では5人に1人近くが相続税の対象となっているのが現状です。

これは、2015年の税制改正で基礎控除額が引き下げられた影響もあります。以前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だった基礎控除が、現在は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に変更されました。

たとえば、配偶者と子2人(法定相続人3人)の場合、基礎控除額は4,800万円。自宅の不動産評価額が3,000万円、預貯金が2,000万円あれば、合計5,000万円で相続税の対象となってしまいます。

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「財産が少ないから関係ない」という誤解

相続について考えるべき2つ目の理由は、「財産が少なければトラブルにならない」という考えが誤解だからです。

遺産分割トラブルの76%は遺産5,000万円以下

最高裁判所の司法統計によると、家庭裁判所で扱われた遺産分割の調停・審判のうち、約76%が遺産総額5,000万円以下のケースでした。さらに、遺産1,000万円以下でも約32%がトラブルになっています。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

理由の一つは、遺産の大半が不動産で、現金が少ないケースです。実家の土地と建物が主な財産という場合、兄弟姉妹で平等に分けることが難しくなります。一人が実家に住み続けたいと考えても、他の相続人から「自分の取り分はどうなるのか」という声が上がることも。

実際の事例では、母親が亡くなり、遺産は実家のみというケースで、長男が「2年後に売却する」と約束して単独で相続したものの、2年経っても売却を拒否し、次男との間でトラブルになった例があります。口約束には法的拘束力がないため、調停で長期化してしまったのです。

空き家問題の半数以上が相続起因

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」では、全国の空き家は約900万戸に達し、空き家率は13.8%となりました。

そして、国土交通省の調査によると、空き家の54.6%が相続によって取得されたものです。相続した実家が遠方にあり、管理が難しいため、結果的に空き家になってしまうケースが増えているのです。

2024年4月からは、相続登記(不動産の名義変更)が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。なお、2024年4月以前に発生した相続については、2027年3月31日までに登記すれば過料の対象とはなりません。

「財産が少ないから関係ない」ではなく、むしろ「財産の種類や分け方によってはトラブルになりやすい」と考えるべきでしょう。

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相続で直面する具体的な課題とは

相続について考えるべき3つ目の理由は、相続にはさまざまな手続きと期限があり、知らないと困ることが多いからです。

相続手続きには厳格な期限がある

相続が発生すると、いくつかの重要な期限が待っています。

まず、相続放棄や限定承認を希望する場合は、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。この期限を過ぎると、借金も含めてすべて相続することになります。

次に、被相続人(亡くなった方)の準確定申告は、死亡後4ヶ月以内に行う必要があります。

そして、相続税の申告・納付は、死亡を知った日から10ヶ月以内です。この期間内に遺産分割の話し合いをまとめ、申告書を作成し、税金を納めなければなりません。

株式会社鎌倉新書の「相続手続きに関する実態調査(2025年)」によると、相続経験者の56.6%が「情報収集の手間」を、54.1%が「書類の多さ」を負担に感じたと回答しています。

相続税の計算は複雑

相続税の計算は、一見複雑に思えるかもしれません。基本的な流れを見てみましょう。

まず、基礎控除額を計算します。前述の通り、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が基礎控除額。たとえば配偶者と子2人の場合、4,800万円が非課税枠となります。

遺産総額が6,000万円だった場合、基礎控除を引いた1,200万円が課税遺産総額。これを法定相続分で分けて、各人の相続税額を計算します。

ただし、配偶者には「配偶者の税額軽減」という特例があり、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税が非課税となります。このため、配偶者がいる場合、実際の税負担は軽減されるケースが多いのです。

デジタル遺品という新しい課題

近年、新たな課題として浮上しているのが「デジタル遺品」です。

オンライン銀行の口座、証券会社のアカウント、暗号資産(仮想通貨)、各種サブスクリプションサービス、SNSアカウント。こうしたデジタル資産について、遺族が存在を把握できず、パスワードも分からないという問題が増えています。

国民生活センターは2024年、デジタル遺品トラブルの増加について警鐘を鳴らしました。サブスクリプションの料金が死亡後も引き落とされ続けたり、スマートフォンがロック解除できずオンライン銀行にアクセスできなかったりといった事例が報告されています。

クレジットカードのポイントや共通ポイントは、多くのサービスで相続できないため、生前に使い切る必要があることも覚えておきたい点です。

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遺言書の作成率はわずか10%以下

相続について考えるべき4つ目の理由は、遺言書の作成率が非常に低いという現実です。

遺言書があれば役立つのに作成されていない

令和5年(2023年)に作成された公正証書遺言は11万8,981件、法務局に保管された自筆証書遺言は累計で7万9,128件(2024年7月まで)。一方、同年の死亡者数は約157万人です。

つまり、遺言書の作成率は約8.8%。10人に1人以下しか遺言書を残していないのが実情です。

興味深いのは、生命保険文化センターの調査で、親が遺言を残していた場合、90.9%の方が「役に立った」と回答している点。遺言書が有益であることは分かっているのに、実際の作成率は低いという矛盾があります。

「まだ早い」「面倒」という先送りの心理

遺言書を作成しない理由として多いのが、「まだ早い」「面倒だから」という声です。

しかし、認知症になってしまうと、遺言書を作成することが難しくなります。厚生労働省の推計では、2025年には65歳以上の認知症患者が約700万人、高齢者の約5人に1人に達する見込み。

認知症になると、遺産分割協議にも参加できません。その場合、成年後見人を選任する必要が生じ、手続きがさらに複雑になってしまいます。

遺言書は、元気なうちに作成しておくことが大切なのです。

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今からできる相続対策

相続について考えるべき5つ目の理由は、今から始められる対策がたくさんあるからです。

家族との対話が最も重要

株式会社鎌倉新書の調査で、相続手続きで「役に立った」と評価されたのは、「専門家への相談」「家族間の話し合い」「生前準備」の3つでした。

特に家族との対話は、費用もかからず、今すぐ始められる最も重要な対策です。親の財産がどのくらいあるのか、どこに何があるのか、親自身はどのように分けたいと考えているのか。

こうした話は、確かに切り出しにくいかもしれません。しかし、何も話し合わないまま相続が発生すると、兄弟姉妹間でトラブルになる可能性が高まります。

まずは、帰省した際などに、さりげなく話題にしてみてはいかがでしょうか。

エンディングノートの活用

遺言書には法的効力がありますが、厳格な要件を満たす必要があります。一方、エンディングノートには法的効力はありませんが、自由に書けるというメリットがあります。

エンディングノートには、財産の一覧、契約しているサービス、介護や医療についての希望、葬儀の希望、デジタル資産の情報などを記載できます。

NTTデータは、2025年12月から金融機関向けにデジタル版エンディングノートサービスの提供を開始する予定。紙のエンディングノートは更新が面倒という課題がありましたが、デジタル版なら手軽に更新できるでしょう。

2024年から始まった贈与税の改正も活用

相続対策として、生前贈与を検討される方もいらっしゃるでしょう。2024年1月から、贈与税の制度が改正されています。

暦年贈与では、死亡前の贈与を相続財産に加算する期間が、3年から7年に延長されました。ただし、3年超から7年以内の贈与については、合計額から100万円を控除できる緩和措置もあります。

一方、相続時精算課税制度では、年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以下の贈与は、贈与税の申告も不要で、相続時の加算も不要。従来の2,500万円の特別控除とは別枠で使えます。

どちらが有利かは、財産の額や家族構成によって異なります。税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

専門家への相談も検討を

相続の問題は、法律、税務、登記など、さまざまな専門知識が必要になります。

弁護士は遺産分割の調停や紛争解決が専門、税理士は相続税の申告、司法書士は不動産の名義変更(相続登記)が専門です。相続の内容によって、適切な専門家に相談しましょう。

自治体では無料の相続相談会を開催していることもあります。まずは無料相談を利用して、自分の状況を確認してみるのも良いでしょう。

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まとめ:相続は誰にでも訪れる人生の出来事

相続について今から考えるべき5つの理由を見てきました。

「大相続時代」の到来、「財産が少なくてもトラブルになる」現実、「複雑な手続きと期限」、「遺言書作成率の低さ」、そして「今からできる対策がある」こと。

相続は、決して資産家だけの問題ではありません。むしろ、平均的な財産の方こそ、事前の準備が重要になります。

何より大切なのは、家族との対話です。親が元気なうちに、少しずつ話し合いを重ねていくこと。それが、将来のトラブルを防ぐ最も確実な方法でしょう。

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今からできる具体的なアクション

最後に、今日から始められる具体的なアクションをご紹介します。

【今すぐできること】

  1. 家族との対話を始める
    次回の帰省時に、さりげなく相続の話題を出してみましょう。「エンディングノートって知ってる?」「遺言書は作ってあるの?」といった質問から始めてみては。
  2. エンディングノートを準備する
    書店や文具店で入手できます。まずは自分自身のために、財産や契約の一覧を作成してみましょう。
  3. デジタル資産の整理をする
    オンライン銀行、証券口座、サブスクリプションサービスの一覧を作成し、信頼できる家族に保管場所を伝えておきましょう。
  4. 無料相談を活用する
    お住まいの自治体で相続に関する無料相談会が開催されていないか、確認してみてください。
  5. 遺言書作成を検討する
    資産内容が複雑な場合や、特定の相続人に多く残したい場合は、公正証書遺言の作成を検討しましょう。
  6. 生前贈与の活用を検討する
    2024年の税制改正を踏まえ、暦年贈与や相続時精算課税制度の活用を税理士に相談してみましょう。

相続は、誰もが経験する可能性のある人生の大きな出来事です。「うちには関係ない」と思わず、今から少しずつ準備を始めてみませんか。

そうすることで、いざという時に慌てることなく、大切な家族との時間を穏やかに過ごすことができるでしょう。今から始めることで、未来の安心を手に入れることができるのです。

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